2023年2月16日、ドローンの国家資格取得を検討している方や無人航空機に関連する事業を行っている方に向けたセミナーをオンラインにて開催し約180名以上の方にご参加いただきました。以下では当日の結果をご紹介いたします。
【特別開催】無人航空機操縦者技能証明制度(国家資格)について
~新制度概要と国家資格取得における注意事項とは~
日時:2023年2月16日(木) 16:00-18:00
開催形式:Zoomウェビナー
プログラム:
Part1:指定試験機関における無人航空機の操縦ライセンス国家試験について
小西 隆太郎 / 一般財団法人日本海事協会 交通物流部 UAVプロジェクトマネージャー
Part2:国家資格に係る登録講習機関での講習概要
高野 耀 / 株式会社スカイピーク 代表取締役
Part3:新制度開始後のドローン事業者の現状と課題
佐々木 慎太郎 / バウンダリ行政書士法人 代表行政書士
■開催概要
改正航空法の施行によるレベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)解禁と共に、“ドローン(無人航空機)の国家資格制度”が令和4年12月5日よりスタートしました。物流・点検・防災分野をはじめとした更なる産業振興を目指し、空の安全な利活用の拡大に向けた環境整備や制度構築が推進しています。
本セミナーでは、ドローンの産業実装に向けた教育・人材育成に取り組む国土交通省登録管理団体/登録講習機関である株式会社スカイピーク代表取締役高野耀は、国土交通省より無人航空機操縦士試験機関として指定されている一般財団法人日本海事協会の小西隆太郎氏、ドローン法務のプロフェッショナルであるバウンダリ行政書士の代表行政書士佐々木慎太郎氏とともに、無人航空機操縦者技能証明制度概要と国家資格の取得における注意事項等について解説することで、本制度における全体像、各種試験概要、一連の流れ、現場運用における注意事項まで、網羅的なセミナーとして考察しました。
■当日のまとめ
PART1「指定試験機関における無人航空機の操縦ライセンス国家試験について」
登壇者:小西 隆太郎(Ryutaro Konishi)一般財団法人日本海事協会 交通物流部 UAVプロジェクトマネージャー
230216 NK操縦ライセンス試験事業(公開用)R11.pdf
無人航空機(ドローン)はさまざまな分野での活用が進んでいる。日本では、少子高齢化による労働人口の減少・過疎化、災害の激甚化を含む社会課題を解決するための社会インフラとして注目されている。一方で、ドローン利活用の拡大には安全性の確保が必須であり、どのような規則が必要かまた持続可能な制度設計はどのようなものか議論がされてきた。
航空法では、航行中の航空機の安全と地上の人と物件の安全確保の観点から、飛行空域と飛行の方法に関する規制が設けられている。また、社会実装に向けた安全確保として、機体登録制度、機体認証や操縦ライセンス等の新制度が創設され、昨年12月5日より施行された無人航空機の操縦技能を担保するものとして、無人航空機操縦者技能証明制度(国家資格)がある。この制度設計においては、自動車等の安全確保制度が比較対象として参考となる。
日本海事協会として、長い歴史の中で培ってきた第三者機関として豊富な知見を活かし、国の代行機関である「登録検査機関」「指定試験機関」として無人航空機事業へ参画した。
無人航空機操縦ライセンスについては、①指定試験機関での一発試験(自動車運転免許の運転免許試験場に相当)と②登録講習機関による講習の活用(自動車運転免許の指定自動車教習所に相当)の2つの取得方法がある。安全運航のための法規制及び知識等の体系化した理解と整理、操縦技能の継続的な修得や確認等の効果も踏まえると、資格取得に当たって登録講習機関の講習を活用することは重要な役割を担うと考えられ、登録講習機関と指定試験機関は本制度のいわば「車の両輪」である。なお、現時点で学科試験の受験者は、二等が約1000名、一等資格が約300名である。指定試験機関での実地試験は現時点で合格率が半分以下であり、経験者であっても登録講習機関の講習を活用する意義が大きいと考えている。
そして国家資格制度の意義として、操縦者の信頼性の確保や、更なる産業振興にむけた、社会受容性を高める観点においても合わせて注目すべき事項である。
- 日本が抱える社会課題を解決するための社会インフラとして更なる利活用推進が期待されることから、これを安全に推進するため、操縦ライセンス制度を含めた新制度が導入されたと理解している
- 日本海事協会は海事分野を含む様々な分野で第三者機関として長い歴史と高い知見を有しており、国の代行機関として「登録検査機関」「登録講習機関」の事業へ参画した
- 登録講習機関での講習は、安全運航のための法規制等の知識や操縦技能を正しく網羅的に修得できる機会であり、操縦ライセンス制度において登録講習機関と指定試験機関はいわば「車の両輪」である
- 現時点での実地試験の合格率も踏まえると、経験者であっても登録講習機関の講習を活用する意義は大きいと考えている
- 日本海事協会は今後も、国・関係機関と連携して無人航空機産業の更なる振興に向けて取り組む
PART2「国家資格に係る登録講習機関での講習概要について」
登壇者:高野 耀(Akira Takano)株式会社スカイピーク 代表取締役
230216国家資格に係る登録講習機関での講習概要r10_skypeak.pdf
スカイピーク社は2017年創立期より一貫して産業分野における教育・人材育成における事業を推進しており、国交省登録管理団体/講習団体として積み上げた知見を元に、登録講習機関としても施行日2022年12月5日よりいち早く講習事務を開始している。
登録講習機関は国が定めた一定の基準を担保する教習所としての役割を担う。テキストなどの教材や講習内容は、国の教則に則りつつも各社が知見を活かしイラストや図解での説明や、講習内容の工夫をすることで付加価値と差別化を図り、受講生の理解促進に寄与している。
国家資格取得の一連の流れにおける主な注意事項としては、初期段階の「技能証明申請者番号取得」の段階で「事務所コード」等の手続漏れのケースが多い。また「初学者・経験者」の定義(基準)については航空局が基本的な回答をしているが、実務上は各社対応が異なる形になるため、個別に問合せが必要である。講習内容については学科・実地・修了審査という基本的な枠組みと共に、国が指定した最低実施時間や講習科目等があるが、詳細まで定められたものではないため、各社毎に一定の自由度がある。
なお、修了審査ついては、減点方式で行うが、特に重要性・安全性が求められる要素については減点数が多く、操縦技能のみならず飛行前後含め、正しく試験内容を認識したうえで臨むことが必要である。(※減点例:不合格・-10点・-5点・-1点など)
様々な登録講習機関があるが、受講者のニーズ(目的)に応じて選択することが推奨される。事業者であれば実務等を実施している(知見も有する)企業を選ぶ場合が多く、資格取得自体を目的とする方であれば、アクセスや費用等の要素で検討するケースが多い印象である。
新たな制度における今回の国家資格は、業務における操縦者の信頼性という側面はもちろん、事業者間の取引の際にも活用されることが想定されるだろう。
- スカイピーク社は創立期より一貫して産業分野における教育・人材育成分野を軸に知見を積み重ねており、管理団体/講習団体業務と合わせ、登録講習機関事業を開始
- テキストなどの教材や講習内容は国の基準に則りつつも、一定の自由度があるため各社の知見により内容や指導方法に差がでる部分がある
- 登録講習機関では学科講習+実地講習+修了審査を行う
- 実地講習は実技のみでなく、実技を含む飛行に必要な一連の流れを学ぶ
- 技能証明申請者番号取得の際の注意事項として、事務所コードの入力漏れが多い
- 初学者と経験者の定義は航空局の基本的な回答はあるが、明確には定められていないため、実態としては各社毎に問合せを行う必要がある
- 修了審査に合格すると指定試験機関の実地試験が免除される。同じ評価基準の試験・スキルチェック・技能の確認を行っているためである
- 国家資格の意義として、資格としての効果効能のみでなく、操縦者の信頼性、事業者間における受発注等の要素にも活用される可能性も考えられる
- スカイピークは今後も、登録講習機関業務のみならず運営サポートやカリキュラム支援をはじめ、産業実装に向けた人材育成・輩出に向けて取り組む
PART3「新制度開始後のドローン事業者の現状と課題について」
登壇者:佐々木 慎太郎(Shintaro Sasaki)バウンダリ行政書士法人 代表行政書士
230216新制度開始後のドローン事業者の現状と課題_v2.pdf
バウンダリ行政書士法人は、2020年3月設立したドローン関連許認可の維持管理とドローンスクール等の運営、新制度サポートなど軸に事業を展開している。登録講習機関の準備状況と課題では、1000社以上の申請が想定されるが、書類の煩雑さや新制度対応等で登録完了数は約250社、事務規定受領数は94社、講習事務を開始している企業はその3割程度と未だに多くない状況(2023年2月16日時点)である。登録講習機関の登録においては、オンライン申請のみで手続を待ってしまっている企業も多いが、手順に則り、付随する指定アドレス等への書類送付も必要で注意が必要である。目安としては、運営開始まで約3カ月間程係る見込みであり、審査完了からも1カ月程度はかかるケースが多い印象である。
言葉が類似しているが、既存の管理団体・講習団体と「登録講習機関」は別物であるという認識が重要であり、その前提に則り各制度設計の枠組みや手続きを理解して、対応する必要がある。講習団体でのノウハウ等は活用できるが、即座に移行できるものではない。
新制度における登録講習機関が増えるのは、主に4月以降と想像でされる。ドローン飛行において国家資格が必須ではないが、今後の業界動向当を鑑みると、保有者の信頼性が高まるのは想定される。飛行計画通報と飛行日誌の記載は「特定飛行のみ」義務ではあるが、こちらにつついても継続的に運用を行っていくことが推奨される。新制度なので、事業者皆様とともに作り上げていくことが重要である。
- 申請1000社、登録完了250社、事務規定94社、事務規定受領まで完了して講習実施できるが運営開始企業数は未だ非常に少ない(2023年2月16日時点)
- 登録の要件は記載されているが、申請書類が多く煩雑である
- オンライン申請だけでは完了しないので正しい理解のもと注意が必要である
- オンライン申請、付随書類提出、事務規定等の提出が必要
- 申請準備から運営開始まで目安として、約3ヶ月ほどかかるが、講師の人数や実習空域の数、事務所の数、差し戻しなどで期間が伸びるケースも多々ある
- 登録講習機関は講習団体・管理団体とは別であるという認識のもと、ガイドラインや告示を読み込み正しい理解が必要である
- 新制度施行に伴い、似ている用語が増えてきているので注意が必要である
- 全国で受講できる登録講習機関が増えるのは4月以降の見込み(※個人の見解)
- ドローンを飛行させるのに国家資格は必須ではないが、手続き上のメリットだけでなく、事業をする上で信用面でのメリット、社会受容性の観点でも重要
- 飛行日誌は「特定飛行」のみ必須、ただし特定飛行でなくても日誌の記載が推奨される
- 新制度が施行したとはいえ、まだまだ確立していない事が多く、航空局含め業界全体が協力しながら推進している現状である
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一般財団法人日本海事協会
WEBサイト:https://www.classnk.or.jp/hp/ja/
指定試験機関WEBサイト:https://ua-remote-pilot-exam.com/
バウンダリ行政書士法人
WEBサイト:https://boundary.or.jp
登録講習機関サポートWEBサイト: https://drone-license.boundary.or.jp/lp_drone-license/
主催:
株式会社スカイピーク
WEBサイト:https://japandronelicense.com/
登録講習機関_Skypeak Drone School 専用サイト:https://japandronelicense.com/lp2/